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東京高等裁判所 昭和49年(行コ)62号 判決

控訴人(原告) 中央車輛株式会社

被控訴人(被告) 大森税務署長

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は「原判決を取り消す。被控訴人は、控訴人の昭和四三年四月一日から昭和四四年三月三一日までの事業年度の法人税について、昭和四四年一二月二六日付でした更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張は、以下に付加するほか、原判決事実摘示のとおりである。

(控訴人の主張)

仮に控訴人が本件建物を取得した時期が昭和四四年二月二八日であつたとしても、控訴人はすでに昭和四一年八月一八日にその敷地の借地権を取得していたのであるから、本件建物の取得費用三〇〇万円が借地権取得の対価としての性質をもつとは到底いいえない。

(被控訴人の主張)

控訴人の右主張は争う。法人税基本通達七―三―六が「(建物等の)取得後おおむね一年以内に当該建物等の取りこわしに着手する等」と規定している趣旨は、これを土地利用目的の懲憑としてとらえて一例を挙げたにとどまると解すべきであつて、当初からその建物等を取りこわして土地を利用する目的が明らかであつてその取得後建物等を取りこわしたときは、「一年以内」の文言にこだわることなく、当該建物等の取りこわし時における帳簿価額及び取りこわし費用は、その敷地(借地権を含む。)の取得価額に算入すべきである。

また、右通達の「建物等の存する土地(借地権を含む。)を建物等とともに取得した場合」の「ともに」とは、必ずしも両者を同時に取得することを要するものではなく、結果的にみて土地(借地権)と建物の双方がともに同一人に帰属すれば足りる趣旨と解するのが相当である。

理由

当裁判所は、当審における新たな証拠を加えて検討しても、控訴人の本訴請求は理由がないと判断するものであり、その理由は、以下に付加、訂正するほか、原判決理由の説示するところと同一である。

(一)  前認定のように、本件建物の敷地については、昭和四一年八月一八日に田中政雄との間で控訴人を賃借人とする賃貨借契約公正証書が作成され、名義変更料及び地代も控訴人から支払われているけれども、これを前記甲第六、七号証、乙第二ないし第一四号証(枝番号省略)と対比し、さらに右公正証書作成の動機についての前記認定事実を考え合わせれば、田中との関係では、本件建物で営業していた控訴人が賃借名義人となつたけれども、控訴人と坂本正憲との間においては、昭和四四年二月二八日、本件建物と借地権とが同時に坂本から控訴人に売り渡されたものと認められる。この認定に反する証人上野修の証言、控訴会社代表者坂本正憲の供述は採用できない。

(二)  当審提出の甲第九ないし第一二号証も、前記日時に控訴人が本件建物を取得した旨の認定を妨げるものではない。

(三)  原判決一〇丁裏二行目の「甲第七号証」の次に「、証人中山哲三の証言」を加える。

(四)  同一四丁裏一行目の「いうべきである。」の次に「証人上野修の証言中にも以上とほぼ同旨の部分があるが、これについても同断である。」を加える。

(五)  同一四丁裏九行目から一五丁表七行目までを削る。

(六)  同一七丁表六行目の「正確に言えば」から同八行目の「したもの」までを削る。

以上のとおりであつて、原判決は正当であるから、本件控訴を棄却することとし、訴訟費用につき民訴法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 瀬戸正二 小堀勇 青山達)

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